2.歯周病と慢性腎臓病の関係
歯周病と慢性腎臓病(以下CKD)は、一見無関係に思える疾患ですが、全身性の慢性炎症疾患として共通点が多く、互いに相乗的に病態を悪化させることが知られています。
1.歯周病がCKDに与える影響
歯周病は、歯周病原菌とそれに伴う炎症反応により、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α、CRPなど)が全身に放出されます。これらの物質は、血管内皮機能を障害し、動脈硬化や腎糸球体の障害を進行させるとされています。
さらに、慢性的な口腔内の感染状態は、CKD患者の全身的な炎症状態を悪化させ、腎機能の低下を加速する可能性があります。
2.CKDが歯周病を悪化させる要因
CKDの進行に伴い、免疫機能が低下し、細菌感染に対する抵抗力が弱まります。
特に尿毒素の蓄積や貧血、唾液分泌の低下(口腔乾燥症)などが歯周組織の健康に悪影響を与えるため、歯周病が悪化しやすくなります。
3.臨床研究の知見
いくつかの疫学的調査研究では、有意に重度の歯周病がある人ではCKDの発症リスクが高いことや、歯周治療がCRP値や腎機能指標(eGFR)の改善に寄与したという報告もあります。
特に糖尿病を合併したCKD患者において、歯周病の管理が腎機能悪化の予防につながる可能性が示唆されています。