教えてドクター!Q&A

中日新聞 院長担当コラムより抜粋

40歳の夫ですが、二十歳ぐらいから喫煙しています。本人も体に悪い事と自覚し、これまで何度か禁煙をこころみたようですが、いずれも成功せず今日に至っております。どうすればよいでしょうか?
喫煙習慣が長期に及ぶと、肺がん、喉頭がんなど各種のがんの発生のリスクが増えるだけでなく、肺の構造破壊が起こり、禁煙するだけでは元の状態には戻らなくなります。高齢になった時、動作時の息切れが強くなり酸素療法が必要となります。

また経済面において、よくタバコ代がかかることが問題にされていますが、実は就労できる期間が短くなるうえに、医療費もかかるようになりことのほうが被害は甚大です。すなわち就労年数が仮に5年短縮すると年収を掛け合わせた額の経済的損失になるからです。また周りの人や家族の受動喫煙も問題です。喫煙習慣はニコチンに対する一種の薬物中毒で、なかなか本人の気合いだけではやめるには困難な側面があります。現在多くの医療機関に禁煙外来があるので利用されることをお勧めします。そこでは、禁煙に関する教育と薬物治療により、一人で禁煙に格闘されるより、効率よく禁煙のサポートができるようになっています。
60代男性です。糖尿病でここ5年ほど、飲み薬に加え食事療法、運動療法を続けてきましたが、先日かかりつけ医からインスリン自己注射が必要と言われました。それほど悪くなってしまったのかとショックでしたが、インスリンは一生続けなければいけないのでしょうか?
2型糖尿病の患者さんで、経口薬に加え食事や運動療法で、コントロールできずに高血糖状態が長期間続く場合では、インスリンを分泌するすい臓のβ 細胞が疲れ果て、その結果インスリンを分泌する能力が低下し、いずれはすい臓の機能荒廃に至ります。

一方糖尿病患者さんの中には、すい臓がインスリンを出す力がまだ残っている患者さんがいます。そのような患者さんでは、インスリンを注射することで、すい臓からのインスリン分泌能を回復させ、一時的にインスリンを使用しても、その後再び経口薬だけでも血糖がコントロールできることもあります。このようなインスリン療法ですい臓を一時的に休ませてあげることを目的とする場合は、比較的早期にインスリン療法を開始する必要があります。インスリン注射=もう末期とお考えの方が多いですが、インスリン注射のほうが、経口薬とちがって細かく血糖調節できる点でより安全であり、近年は薬剤の剤形が改良され、とても簡単に注射できるようになりました。
48歳の夫が、食後の血糖値が高く、糖尿病予備軍だと診断されました。糖尿病には食事療法が有効だと聞きますが、アルコールやおつまみが大好きな夫なので、糖尿病を発症させないためには、どうしたらよいのでしょう?
糖尿病予備軍と診断されているようですが、すでにこのような状態では動脈硬化が進行しやすく、糖尿病に準じた状態であると考えられ、このまま放置せず、生活習慣の改善の必要性を自覚する必要性がありそうです。このような場合には、1)糖質脂肪の摂取制限などのカロリーの制限、2)白飯などの吸収されやすい炭水化物を制限することで、食後に急速に血糖が上昇しないようにする、3)夜間は食べたものが、エネルギーに変換されにくい時間帯のためにカロリーの摂取を控えるなどの注意が必要です。
アルコールは糖尿病悪化の原因になりうるため、ビールなら1缶、日本酒なら1合の半分程度に留めておく方が良いようです。いずれにしても、今後の糖尿病への進展予防のために、一度は専門医受診をお勧めします。糖尿病の原因として、遺伝と環境因子からくる2型糖尿病以外にも、膵炎、膵癌などの病気と関連する場合もあり注意が必要です。
現在、父が糖尿病と高血圧の治療を受けています。糖尿病の患者は他の病気にかかると重症化しやすいと聞きましたが、特に気をつけたほうがよいことがあれば教えてください。
糖尿病になると、脳血管障害をはじめとする様々な合併症が高率に発生する事になり、糖尿病という本来の病気よりも合併症により、命を失うことが多いようです。
糖尿病の合併症は、高血糖そのものに伴われる合併症と、血管の病気を中心にする慢性の合併症に分ける事ができます。高血糖になると、尿中にも糖がたくさん出てまいります。このとき尿糖は大量の体内の水分を引き連れて出る事になり、その結果多尿傾向になるのが特徴です。この多尿により、体の水分が失われるため、脳や心臓に行く血液の流れが悪くなり意識消失や心筋梗塞がおこることもあります。 また高血糖の状態では、細菌などに対する抵抗力が弱まり、ひどい感染を起こしやすくなります。普段なら簡単に治る傷でも、化膿してしまったり、風邪でも肺炎になりやすくなるのはそのためです。慢性的な合併症としては糖尿病による目の病気(糖尿病性網膜症)、腎臓の病気(糖尿病性腎症)、 糖尿病による手足のしびれなど末梢神経の病気(糖尿病性神経障害)などがあります。糖尿病になっても、特別な症状もなく進行し、やがて目の障害や重い腎臓病になることも知られていますので、日頃から血糖の管理をすることがとても重要です。
慢性腎臓病と言われ、主治医に血圧を下げることが大切だと言われました。高血圧とどのような関係があるのでしょうか。
慢性腎臓病(CKD)とは慢性に経過するすべての腎臓病を指します。 このような患者さんは日本に1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いると考えられ、新たな国民病ともいわれています。 
腎臓は、ちょうど腰の上あたりにある一対の臓器で、片方の腎臓には糸球体と呼ばれる細い血管でできた濾過フィルターが約100万個あります。この濾過フォルターの状態の良し悪しで腎機能が決まります。このフィルターの性能(腎機能)を悪化させる最大の要因は高血圧です。このかたの様にすでに腎機能の悪化を認める場合はさらなる悪化防止のために、血圧を130/80未満に目標を設定する必用があります。しかし確実に下げるためには、塩分制限以外に降圧剤の併用が必用な場合が多いようです。とにかく、高血圧による血管の損傷を防ぎ、腎機能を維持するためには、何が何でもきっちり目標値まで下げることが最も重要です。逆に降圧剤の服用を嫌い、症状がないので放置されたりしていると、最終的に深刻な臓器障害に至ることがあるので注意が必用です。
最近、ニュースで低血糖による事故という言葉を聞きました。どんな問題が起こるのでしょうか?
昨年6月に大阪御堂筋で糖尿病治療中の会社員がワゴン車を運転中に低血糖となり、車が暴走し通行人に重軽傷を負わせた事件が報道されました。
 血糖値が急激に下がる時には空腹、発汗、震え、不安、動悸などの自律神経症状が出ますが、血糖値が緩やかに下がる時は、意識の混乱、おかしな行動、集中力の散漫、眠気、発語困難、頭痛、複視、けいれん、昏睡などの症状が出て他の疾患と間違われる事もあります。また糖尿病が進行し、神経が冒されると上記の自律神経症状などの前兆なしに、突然意識がなくなることがあります(無自覚低血糖症)。この病態は過去に何度も低血糖を起こした人にも出現することもあり、事故にもつながるため大変危険です。また血糖管理の指標であるHbA1cが良好でも、夜間に低血糖を起こしている可能性があり、睡眠中に歯ぎしりをする、寝汗がひどい、悪夢にうなされる、寝ても疲れが取れない、起床時に頭痛があるような場合も夜間低血糖になっている可能性があります。これらの夜間や日中の無自覚低血糖は交通事故や心血管病死と強い関連があり、これらは我々が想像しているよりも遥かに頻度が高いようです。最近では、持続血糖モニター(CGM)で家庭での血糖の変化を連続して観察出来るようになり、事故が起こる前に未然にチェックすることができます。詳しくは糖尿病専門医のいる病院で相談してみてください。
40代男性です。動脈硬化は加齢とともに進行すると聞きました。今は特別に異常はないですが、予防するのにはどのようなことに気をつけたらいいのですか?
血管の老化現象(動脈硬化)がその人の寿命を決定していることも多いようです。 動脈硬化の進行させる最大の要因は喫煙と高血圧で、禁煙と血圧の管理でかなりのリスクを減らすことが出来ます。
コレステロールや中性脂肪、糖尿病、内臓脂肪の増加なども動脈硬化に大いに関連するので、食事管理と定期的な運動習慣をつけることが大切です。朝食はたくさん食べても最も効率よくエネルギーに変換されやすいので太りにくく、夜間から深夜の時間帯は、摂取した栄養分が簡単に脂肪組織に変換されてしまいます。朝食を一番多く食べて次に昼食を多く食べ夕食を一番少なくするのがポイントです。油分の多い夕食をさけたカロリーコントロールは重要ですが、食事開始時に多くの野菜を食べてから他のメニューに移ると、食物繊維が食後血糖の急激な上昇を抑え、動脈硬化の予防につながります。
健診でメタボリックシンドロームだと注意を受けましたが、生活習慣の改善をするのに、何から手をつけていいかわかりません。どうしたら良いのかアドバイスを下さい。
メタボリック症候群と診断された時点で、将来の脳卒中、心臓病、認知症、腎臓病などに至る道筋が明確になってきたと自覚すべきです。重要なことは、あくまでも自分自身の食事と運動に関する生活習慣の改善で治る可能性があるという事です。まず食事ですが、油ものなどカロリ—の高いものは避けるのは当然ですが、カロリーだけではなく、食べた物が、どのぐらいのスピードで消化管から吸収されるかを考える必用があります。 でんぷんや砂糖、あるいは一旦、加工して粉からできた製品は、吸収速度が早く、急激な血糖上昇を引き起こし、動脈硬化、肥満を加速させます。白飯を食べるより、多少玄米や他の穀物が混合された食事の方が好ましく、また最初に野菜から食べる習慣により吸収スピードを遅らせることが可能です。また人間の体内時計の働きで、夜間は食べたものが、エネルギーに変換される効率が悪いので主食を減らすべきで、逆にエネルギーへの変換率が高い朝に多くご飯を食べる食生活への変換が大切です。運動によるカロリー消費は以外と少ないものです。しかし最もエネルギー消費がなされる筋肉を、運動により維持しできれば増やすことで、何もしなくても消費できるカロリー(基礎代謝量)を増やすことができます。
50歳の夫のことですが、毎年の会社の検診では、いつもHbA1cの数値が5.8から6.0で、糖尿病にはなっていないので安心しているようです。このような場合何か注意することはありますか?
正確には糖負荷試験を行わないとわかりませんが、おそらくこの時期ではまだ典型的な糖尿病合併症である網膜症、腎症、神経症などの微細な血管に生じる合併症はそれほど進行していないと考えます。しかしご主人の場合は、すでに膵臓からのインスリンの分泌に異常(分泌の遅延、過剰分泌)があり空腹時の血糖は正常でも、食後血糖が高くなっている可能性があります。実は、このような状況では、比較的太い血管において、動脈硬化病変が急速に進行してしまう事が知られているので決して安心できる状態とは言えません。そのためにまず食後の血糖を正常に戻す努力がが必要で、カロリー制限以外に①ベジファースト(野菜を先に食べる習慣)、②低GI食(食後血糖が上昇しにくい食材)に置き換える事が有効です。 これらの食習慣は運動療法と同様に肥満も防止し膵臓に余分な負担をかけないために糖尿病への進行を抑制します。そのまま放置せず、できるだけこの時期から専門医を受診して糖負荷試験によりインスリンの分泌の状態がどうなっているかを確認し、適切な対策を講じることをお勧めします。